盗難通帳による不正引出は?
全国銀行協会は、インターネット・バンキング上の不正引出についてのアンケート結果を発表しています。
| 時期 | 件数 | 被害総額 |
|---|---|---|
| 2003 年 4 〜 6 月 | 244 件 | 約 8 億 0400 万円 |
| 2003 年 7 〜 9 月 | 183 件 | 約 6 億 8500 万円 |
| 2003 年 10 〜 12 月 | 140 件 | 約 2 億 4600 万円 |
| 2004 年 1 〜 3 月 | 107 件 | 約 2 億 2300 万円 |
| 2004 年 4 〜 6 月 | 55 件 | 約 5100 万円 |
| 2004 年 7 〜 9 月 | 80 件 | 約 7100 万円 |
| 2004 年 10 〜 12 月 | 80 件 | 約 1 億 6600 万円 |
| 2005 年 1 〜 3 月 | 53 件 | 約 6200 万円 |
| 2005 年 4 〜 6 月 | 70 件 | 約 5800 万円 |
| 2005 年 7 〜 9 月 | 45 件 | 約 7 億 8800 万円 |
| 2005 年 10 〜 12 月 | 61 件 | 約 6600 万円 |
| 2006 年 1 〜 3 月 | 41 件 | 約 3800 万円 |
| 2006 年 4 〜 6 月 | 49 件 | 約 3700 万円 |
上表は各銀行の回答を集計したものですが、銀行が「盗難通帳による不正引出」と認めたものしか含まれていません。
預金者が「盗難通帳による不正引出」と主張しても、銀行が認めなければ含まれていないのです。
そして、預金者保護法と民法第 478 条で述べたように、通帳が第三者に不正使用された場合に直接該当する法律がなく、民法第 478 条を類推適用して不正使用も有効な出金とされています。
民法第 478 条の条文は以下の通りであり、類推適用すると下表のようになります。
債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、 過失がなかったときに限り、その効力を有する。
| 民法第 478 条 | 類推適用 |
|---|---|
| 債権の準占有者 | 通帳の持参者 |
| その弁済をした者 | 金融機関 |
民法第 478 条の類推適用では、問題になる点とならない点が以下のように整理されます。
- 問題になる点
- 金融機関の悪意の有無
- 金融機関の過失の有無
- 問題にならない点
- 預金者の過失の有無
しかし、最近では 2-1 の「預金者の過失の有無」についても議論されるようになり、更に以下の場合分けがされています。
- 預金者に過失がなく、金融機関に過失がない
- 預金者に過失があり、金融機関に過失がある
預金者に過失がなく、金融機関に過失がない場合の盗難通帳による不正引出
偽造・盗難カードの不正使用については、預金者保護法により預金者に過失がなければ、金融機関の過失の有無によらず全額補償されますが、盗難通帳は対象外です。
伊藤 達也金融相(当時)は、盗難通帳についても検討するよう金融庁の「偽造キャッシュカード問題に関する研究会」(岩原 紳作座長)に求めましたが、預金者保護法には含まれませんでした。
従って、従来通り民法第 478 条が類推適用されるものと思われます。
預金者に過失があり、金融機関に過失がある場合の盗難通帳による不正引出
民法第 478 条の過失相殺を類推適用して、損失額を分担した裁判例があります。
- 東京地判平成 6・9・21 金融法務事情 1403 号 44 頁
- 東京地判平成 11・4・22 金融・商事判例 1066 号 3 頁
- さいたま地判平成 16・6・25 金融・商事判例 1200 号 13 頁
